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お客様アップへの道
(2006.11.26)
奥さん奥さん、〔手招きのゼスチャー〕
ちょっと聞いてくださいよ。
*「なんだよいきなり! みのもんたみたいな語り出しから入るだなんて」
実はですね、今回分の文章をサイトにアップするにあたりまして、
私と父の間ではこのようなやりとりが交わされたのです……

2006年11月26日、朝。
私「えーと、今日の分の更新分はこれでいこうと思うけど、原稿読んでみてね」
父「おいおい、このタイトルはかなりおかしいだろう。
『お客様アップへの道』って、日本語としておかしいって気づかないか?」
私「は? 別に」
父「『お客様アップ』っていうのが問題だ。
これは‘お客様の数をアップさせる’という意味なのか、
それとも‘お客様の質をアップさせる’という意味なのかが明確でないだろう」
私「そんなの前者に決まってるでしょ」
父「ダメだ、誤解を生む可能性の少しでもある表記は望ましくない。
ここはタイトルを変更して『お客様の数アップへの道』に替えるべきだ!」
私「それ、言葉選びのセンスがぜんぜんダメダメだと思うんだけど」
父「どうでもいいが、とにかくなんとかしろ!
あと、このまえの更新分で、福井の鯖江駅の駅員さんのセリフで、
『もう終電出ちゃいましたけど』というのがあったが、
あれも文章で書く場合は主語と述語の関係をもっと明確にするために
『もう終電が出ちゃいましたけど』にしないと、本当はダメなんだぞ!」
私「あのときは僕が、文章のノリを活かしてあえて、『もう終電出ちゃいましたけど』にしたから、
あれはあれでいいと思うんだけどな〜」
父「まあ、お前のブログやからな。そのくらいは好きにしたらええやろ」
私「じゃあ、ここまでのやりとりをサイトにきちんと書いて、
タイトルの誤解の可能性をゼロにしておくから、それでいいでしょ」

*「…………」
やはりあそこのシーンでは、『もう終電出ちゃいましたけど』しかないと私は思うのですよ。
参照→福井の工場に修行に.1 後編
これがよく日経新聞などに書かれる、『世代間の断層』というやつなのでしょうか。
*「それちょっとちがうとおもう」

    ************

さて前回分にて、
『オシャレなメガネを集めてお店に品揃えすれば、お客さんが増えるに違いない!』
と考えた私は…
*「イマドキのオシャレなメガネをちょっとづつ集めて、お店に品揃えして目立つ場所に置いたんだったよね」
はい。ですが、いまいち思ったほどの劇的な効果は得られなかったのです。

*「“劇的な効果”って、どれくらいの効果のことをイメージしていたの? 岡本さんは」
[1].‘キャー! このアイトピアってお店に置いてあるメガネ、超カッコイイのばかりだわー!!’
[2].‘すげえ! この品揃えは宝の山だー!!
どんどんこのお店でメガネを買って集めて、コレクションしていかなきゃだよなー!’
[3].‘いやあ、このお店はいいものをたくさん置いておられますね。
ぜひ私のブログであなたのお店のことを紹介させて下さい。’
[4」.‘新聞社の者ですが… 御社のメガネに対するオシャレの感度はすでに、
私どもの情報ベースにも記録されるところとなっていますよ。
ぜひとも今回、御社を取材させていただきたいのですが’
[5].‘まったくもって、アイトピアさんのメガネは素晴らしい。
このメガネをかけて他の眼鏡屋さんに行ったら、
『その眼鏡、どこで買ったんですか? ちょっと写真を撮らせてください!』
っていって写真を撮られちゃったよ’

まあ、このくらいの効果がなければ、劇的とは言い難いでしょうね。
*「本気で言ってんの、このヒト……」

……といいますか、実のところ、[5].については実際に当店であったお話でして、
私の選んだとっておきのメガネフレームをお買いあげになったかたが、
そういったことがあったよとお話をしてくださったことがありました。
*「それじゃ、成功してるってことじゃないの?」

しかしながら、[5].については一例だけですからね…。
ごくごく一部のかたに喜んでいただくというだけでは、
目に見えてお客様が増えてくるというところまではいきません。

あと、[4].も実際にありまして、
当店アイトピアが朝日新聞社さんに取材をしていただいたことも最近ありました。
*「いったいどうやって、アイトピアのことを知ったんだろう、新聞社の人は…」

しかしながら、効果がじわじわと現れてきたのは数年が経ったあとのお話、
ごく最近になってからのことでして……。
[3].や[2].や[1].のような感想を、道行くほとんどの人に持ってもらうところまでは
遙かに及ばなかったのです。
*「たしかに実際、
かなり多くの人にそこまでの印象を持ってもらうほどのお店じゃないと、
眼鏡屋さんに大勢の熱心なお客さんがつくところまではいかないんだよね。
要は支持者数の絶対数が足りなかったから苦しくなったと」

とにかく、デザインセンスの高いブランドを20本や30本揃えただけで成功できるほど、
メガネの世界は甘くはなかったということだけは、いやというほどに思い知らされましたね。
それにしても不思議なことです。洋服屋さんであれば、
私自身が[1].や[2].や[3].のような印象を持つ品揃えのお店がいくつかは見つかるのですがね…
*「それについて、たしか岡本さんが読んだビジネス書のひとつに書いてあったよね。
『一般の人々は、日常の様々なことに忙しく関わっているので、
洋服や靴のことなどを一日中考えているわけではない。
なので、オシャレに訴えかけるだけでどんどん購買意欲が起きてくる人というのはごく少数である』
あの本に書いてあるとおりだとすると、
岡本さんはいってみればファッションのことをけっこう集中して考えてる半分業界人だから、
商品のファッションセンスだけで一般のお客さんがバンバン増えると勘違いしちゃったってことになるね」

そうですね。このサイトの前回の更新分でも述べましたが、
オシャレなセンスだけで成功したお店は、次のうち最低2つを満たしていたのですよ。

〜オシャレなメガネをそろえた眼鏡店の、3つの成功ポイント〜
理由1 『雑誌やテレビで紹介され、広告を出してお客さん集めをしていた』
理由2 『‘イメージの統一をした品揃え’をしていた』
理由3 『とにかく財力と規模で大きく出て、勝負をかけていた』

オシャレなお店にとって、センスはあくまで最低条件。センスは良くてあたりまえ。
ちょっと頑張ってオシャレな品揃えをしたところで、ドングリの背比べ的な競争となるだけですので。
“実はこういうところで差がついていた”、というわけですね。

*「大切な要点をまとめてみると、
理由1は広告媒体の宣伝力。
理由2は店頭の、統一されたわかりやすいイメージ宣伝力。
理由3は圧倒的に手のかかった大きな財力による店頭の広告効果。
つまるところは宣伝力の総力戦になるってことだよね。
オシャレ路線のお店の、生き残りをかけた競争っていうのはさ」

そのとおり。アイトピアは理由1.2.3.と、すべての点でオシャレの総合力の強い店に負けていましたので、
なかなかオシャレ方面では効果が見込めなかったというわけです。
*「ともかく、オシャレのほうを頑張ったにも関わらず、
相当に長い間、アイトピアは経営が青息吐息だったんだよね。
で、オシャレなメガネを置くだけでは劇的な効果はなかったとわかった岡本さんは、次にどうしたの?」

よくぞ聞いてくださいました。道行く人々からの反応もたいして劇的とはいえず、
口コミがドンドン広がっていくこともなさそうだと感じた私は、
「なにかが間違っているような気がする」という観念のもと、
ビジネス本を読みあさり、「広告宣伝力」がことのポイントであると、
やっとのことで気づいたのです。
*「ふつう最初から分かると思うんだけど…」

私は世間知らずでしたからね…。とにかく書店に出ていたビジネス関係の書籍をすべて立ち読みで読み尽くし、
「広告を低費用で出して、失敗しながらでもスキルを磨いていき、
お客さん集めの技術と勘を鍛えていくのが近道」という真理に到達しました。
ただし読んだ本はほとんど斜め読みでしたが…
*「立ち読みの斜め読みで本の内容なんて、ろくに理解できるものじゃないんだけどね」

そこで私は、さまざまな作戦を自ら考え出し、果敢に実行していきました。
*「そんなまた、おおげさな… どうせ新聞の折り込みチラシを配布したりとか、ティッシュくばりとかをしたんでしょ?」

いいえ。私は、そのようなよくあるパターンの路線のことはしていません。
看板はお金が掛かりますので、私の作った文章の看板には、
ケチな岡本家からはそのようなお金はとうていおりませんし、ティッシュ配りにしても同じこと。
ただしA4サイズのプリント原稿を作ってのコピーは、さほどの予算がかかりませんので、
これのみを使ってお客さん集めをしなければいけないというのが、私に課せられた条件でした。
*「度を超してケチってのも考えものだよね…」
それでも当時の私は、『自分がやれば必ず成功する』と、前向きに明日を信じていたものです。
そして、普通の人が考えも及ばないようなトンデモない計画ばかりを実行していったのです。

●アイデアその1:人の流れを変えよう計画
お店の周りの人の流れを見ていると、どうもアイトピアの裏手の商店街に人が大量に流れていっているように思える…
ならばこの人の流れを私の力で変え、人々にアイトピアの存在を知ってもらうのが上策に違いない。

*「どうしてそういう発想になるんだろ… ガクガクブルブル」
私としては楽しい内容のプリントを作って配布したかったのですが、
父親はその方針に難色を示しました。そこで父が、次のような内容のプリントを作り…
それを私が、人の流れの分かれ目となる横断歩道でしばらく配ったのです。
『〜メガネのふきかたはけっこう大事です。あなたのメガネを長持ちさせるメガネのふきかたをお教えいたします〜』

結果、まったくお客様アップは見込めず。惨敗。
*「だからそういうふうに奇をてらうから失敗するんでしょ!」
お金をまったくかけずに成功するって、けっこう難しいものですよね…。
*「ビジネス本には‘低費用で広告を出そう’って書いてたのに、
‘ほぼ無費用で’やっちゃったの?… 〔唖然〕」
父に、「そんなんでお金かけて、失敗したらどうするんや〜」と言われたため、
広告を出稿することにはしばらく着手できませんでした。
ほんの4〜5万円の広告でも、私の書いたワクワク系の文章でなら、
見た人の目を釘付けにする自信があったのですがね。
父に言わせれば、「ヘンな文章書いて、アイトピアのイメージが悪くなったら困る」とのことです。
なんということでしょうか。
*「その気持ちはすこしばかり、分かるような気もするよ…」
まったく、失敗を怖れない精神がビジネスではもっとも大切だというのに…
とくに父にプリントの文面を書かせたのがいけませんでした。
なんでも「お前が書いたら、間違ったこと書くかもしれへんからな〜」とかなんとかいって… ブツブツ
*「お金を使って広告を出していても失敗しただろうね、その感じだと。 ハァ」

そこで私が、次の計画に着手するにあたり、またも父親が意見を出してきました。

父親の意見
『結局、一般の人々には、フィッティングが必要だというメガネの意識が希薄だから、
そこに気づいてもらうような、啓蒙していくような広告を出せば成功するのではないか』

そして父親が考えついたのが、アイデアその2でした。

●アイデアその2:インタビュー計画(アンケートの文面は父親発案)
「メガネにはフィッティングが必要だということを、ご存じでしょうか?」
という内容などの入ったアンケートを作成し、
簡単な景品をつけて道行く人々やバス停にいる人々にアンケートを行う。

*「なんか見るからにダメダメそうな計画だよね…」
そうです。私に輪をかけて、父には商才がなかったのです。〔キッパリ〕
今の私であれば、‘これはダメだ’と一秒で分かりますが、
当時の私にはそれがすぐには分かりませんでした。
しかし実際にアンケートを数日続けてみれば、「あぁ、これは効果がないな」とすぐに気づくもの。
そこで私はすぐにその計画にあきらめをつけ、つぎの計画にいちはやく乗り換えようとしたのです。
*「つぎの計画って… いったいどのくらいの数の計画を用意していたの?」

アイデアだけはいくらでも浮かんできたものです。
とりあえずお金のかからないものから実行していったのですが、
ざっと10はアイデアを練って手ぐすね引いて準備しておりました。
*「なんかだいたい、どういう計画が用意されてたのか想像がついちゃうんだけど」

つぎの計画に乗り換えようとした私でしたが、父親から待ったが入りました。
「ちょっと待ってくれ。このアンケート、
いま眼鏡屋の研究会仲間でやってるメールのテーマにするから、もうちょっと頑張って続けてくれ」

お店が売れていないというのに、お客様集めよりも研究会のメールのほうが大切だとは… ガクッ
しかもそのとき、私は大学で勉学に励みつつお店の経営の心配をし、
さらに深夜は親類の銭湯を手伝って、睡眠時間4〜5時間で働いたこともあったものです。
後に父から聞いた話では、「若いときはいろいろ苦労しといたほうが、
大人になったときに真面目な人間になれるからな〜」とのこと。
*「息子があまりにも変人だったから、ちょっと心配になってたのかもね」
ですが残念ながら、どのような人格矯正法をもってしても、
私を無欲な真面目人間にすることは決してできないことくらい
気づきそうなものなのですが。
*「そうだね、人格が矯正されなかったから、
ついにこんな前代未聞のサイトをはじめちゃったんだものね」

ですが私はもともと、対人のほうではあまり神経の太い方ではありません。
アンケートはなにぶん神経をすり減らし、精神的にストレスのかかるものでした。
それを「これ以上続けても効果がない」と実感でわかっていながらも続けることは、
非常なる精神的負荷を私にもたらし……

*「それで、どうなったの?」
ここで胃腸の調子をちょっぴり崩してしまい… どうも父親の意見を聞くとロクなことがないと学習。
今後は私一人のアイデアで勝負しようと誓ったものでした。
結局のところ、アンケート計画は体調を崩しただけで成果無し……。
*「で次こそは、岡本真行完全オリジナル計画がスタートしたんだよね?」

はい。次のアイデア3で、私の人生をかけた、命がけの大作戦の火蓋が切って落とされたのでした。

次回に続く

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