強度近視の検眼で留意すべきこと


強度近視の検眼で留意すべきこと
                          岡本隆博
眼鏡処方のための検眼で、強度近視の場合には、
そうでない場合に比較して、より注意をすべき点が
いくつかあります。
それを以下に述べます。
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1)上斜位の測定

浜田さんもおっしゃっていましたように、上斜位の測定においては
光学上斜位が検出されてしまわないように注意するということです。

たとえば、左右ともに10Dであれば、それをテストレンズで組んで
テスト枠が1mmだけ傾いた(右下がりか左下がり)としても
それにより1△の上斜位が検出されてしまうことがあるわけです。

この誤検出を防ぐには、いくつかの方法があります。

a)裸眼で光点を見させて、自覚的カバーテストをする。

裸眼で、まず、右眼をカバーし、正面にある光点(かなりぼやけている)を見させて、



次にそのカバーを瞬間的に左に移して、光点がどちらに移動するかを尋ね、
もし、時計の8時の方向、という答であれな、右眼にベイスダウンを与え
左眼にベイスインを与えて、光点が動かないようにする。

この検査は、強度屈折異常眼の眼位を測定する場合の、
もっとも信頼できる検査であり、テストレンズを使わないから、テストレンズの
光学中心の位置の左右での高さのずれにはまったく左右されない
方法です。
ですので、裸眼視力の測定のあとに、
必ずすぐに行なっておくようにすればよい。

b)通常の上斜位の測定

偏光視標やマドックスなどの通常の斜位の測定をする場合には
テスト枠の傾きがないかどうかを必ず見て、それがあれば修正する。
もし、強度近視でしかも不同視というのであれば、
テスト枠に傾き(右下がりか左下がり)がなくとも
遠見では光学中心よりも高いところを視線が通りがちなので、
視線がそういう場所を通ることによる左右の上下プリズム誤差による
光学的上斜位の検出がおこりがちなわけである。
なので、その場合の検出値は、単に強度近視である
場合よりも、さらに信頼性が低いものになる。

c)その逆の方法

マドックスや偏光視標による上斜位検査において、
強度近視の場合には、被検者にテスト枠の両方の耳部分を持たせて
視標を正常に(上斜位が生じていない状態)に見えるように、
左右に傾き方を変えてもらうという方法もある。

そして、そのときに、枠の傾きを観察すればよい。

なお、この1)のことはテスト枠による検眼でも
器械検眼でも要注意です。

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2)VD(角膜頂点間距離)の問題

a)VDの絶対距離

ご承知のように、強度屈折異常眼では眼鏡矯正の場合に、VDのわずかの変化で
矯正効果が意外に変化します。
たとえば、10Dだと1mmにつき0.1D、15Dだと1mmnituki,0.23mmほどの
変化が生じます。

実際のところ、強度近視矯正のウスカルメガネは、

・やや弱めの度数でも矯正効果を上げる
・フレーム視野を広くする
・レンズの歪曲による空間視の違和感を減らす
・外見的な目の縮小を少な目にする

などの理由でVDを短め(まつ毛すれすれ)
にしてフィッティングすることが多いものです。

そうすると、当然ながら、検眼のときのVDも短めに設定するのが
よいわけです。

しかし、テスト枠によってはVDが12mm以上にしかならないことがあります。
その場合には、そのVDで最終的に処方度数を決めたのであれば、
実際に調製する度数は、換算しないといけないことが生じてきます。

たとえば、もしも、VD12mmで決めた度数が-10Dであって、
実際のメガネではVDは9mmだ、というのなら、
-9,75が調製度数となります。

VD1mmの変化で矯正効果がどれだけ変わるのかというのは
下記の式で近似値がわかります。

△D = D×D ÷ 1000

たとえば、12Dなら、144÷1000 ですから、VD1mmでの
矯正効果の変化は、0.14Dとなります。

b)VDの左右差

テスト枠によってはVDの左右差を調整しにくいものがあります。
その場合には、強度近視だと両眼調節バランステストや
両眼クリアバランステストの結果の信頼性が低くなります。
たとえば、-11D付近の度数で、右のVDの方が左のVDよりも2mm長い状態で
両眼調節バランステストをした結果が、
右の方が0.50D強い状態でバランスが取れた、
としますと、実は本当の左右バランスは、
0.25D右眼が強い状態、なわけです。


強度近視の検眼においては、左右のVDがどれくらいになっているのか、
ということと、
左右のVDがほぼそろっているのか、
ということを必ず注意しないといけません。

それは器械検眼でも同じですし、器械検眼の場合にも、
最後はテスト枠による装用テストをするのですから、そのときに、
そういうVDのチェックが必要です。

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3)2枚球面の見落とし

当店の場合、強度近視のテストレンズは
-11までは0.25刻み、
-14までは0.50刻み
で用意していますが、
それ以上となると1D刻みです。
そうすると、たとえば、-14.25とか-14.50なんでいう度数の場合は
テストレンズを2枚重ねて作るわけです。
テスト枠のポケットの一番うしろに-14D、一番前か前から2番目に
-0.50Dを入れます。

そして、最終的に度数が決まって、それをカルテに書き入れるときに、
通常は「二枚の球面の度数を加えて」ということはあまりしません。
一番奥に入っている度数を、カルテの球面度数のところに
書き込む「クセ」がついてしまっています。、
ですから、二枚で球面度数を作った場合には、
ついうっかりと一番奥に入っている球面レンズの度数だけ書いてしまう、
ということが、起こりがちです。
(クセというもののおそろしさは、私があらためて申し上げるまでもないでしょう)

そういうことを防ぐには、できるだけ強い度数まで、細かい刻みでテストレンズを
用意しておくべきなのですが、みなさんは、どこまで用意しておられるのでしょうか。


それと、この失敗を確実に防ぐことができる
有効な手段は、いまのところ私は発見できていません。

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以上のほかに、もし、
弱度ではあまり関係ないけれど
強度屈折異常には特に注意すべきこと、
があれば、
ぜひお聞かせいただけましたら幸いです。


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