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梅田の地下街マップ!
(2006.12.8)
参考→大阪梅田・地下街の地図です


命がけボランティア

さて今回分は、「アイトピア奮戦記・お客様集めメキメキシリーズの第4話」となります。
*「いつからこのシリーズは、そんな仰々しいタイトルになったんだよ?」

前回までのお話で、
父親の考案した『街角アンケート計画』を実行して、心身共にくたびれ果て、
このやりかたでは成果がつかめないことを学習した私でしたが…
*「それをやらせる方もやらせる方だけど、やる方もやる方だよね。
しかもそれで大成功するつもりがあっただなんて…
まあいい勉強になったんじゃないの?」

しかも、もう効果がないことがわかった後でも、
父親のメールのテーマにするためだけの目的で街角アンケート続行だなんて、なんでまたこんなことを…
*「自業自得だよ…〈ボソ〉」

しかも研究会仲間の眼鏡店から来たメールによるとどうも、
他のお店でもこのアンケートを実施していて、
その場合はすでにお店に来たお客様に、アンケートの内容をお聞きしているらしい…
*「他のお店は、当時の不況下でもうまくやってたんだね」

アイトピアはお客様に恵まれないところを必死に苦労しているというのに、
メールのテーマでアンケートに参加した他のお店は、まったく苦労していないだなんて。
いったい誰に商才がないから、こうなってると思っているのでしょうか!
*「また父親への愚痴か… まあアイトピアは、一気に広告費を使ったり、
大改装したりして道行く人たちにアピールすることもしなければ、
安売りを打ち出すわけでもないってことで、
普通の人々から見たらあまり目立たないメガネ屋さんだったんだものね」

そういえば、聞いたことがあり申す。〔キリッ〕
*「なにその言葉遣い…」

当店の一見のお客様とお話しをしていまして、アイトピアについての話題なると決まって出てくる言葉が、
「いや〜 こんなところにめがね屋さんがあったなんて、いままでずっとこの道を通ってたけど、
メガネが必要になるまで気がつかなかったなぁ」
というものでした。なぜなのでしょうか…
*「なぜなのか、自分で考えてごらん。次のお客さんアップ計画のアイデアが生まれてくるかもよ」

……。
ともかく、私が街角アンケートを終えて、対人ストレス真空パック状態でアイトピアに戻ってきたあと、
お店の二階で悪夢にうなされ、ウンウンうなっていると…
お店の一階からヒソヒソ話が聞こえてくるのです。
父が母に小声で話しをしていまして…

父「マサユキももうちょっと、真面目な人間になってもらわんといかんからな〜
‘日本のビジネス界を自分が変える’とか、
‘アイトピアを連日マスコミに取り上げられるほどのニュース性のあるお店にしてみせる’とか、
‘これまでになかった業態の眼鏡ビジネスをドンドン立ち上げて、成功させる人間になる’とか、
ワケのわからんことばっかり言ってるからな〜。
いまの年代の時にたっぷりと苦労させとけば、自分が凡人だってことにちゃんと気づいて、まともな大人になれるからな〜
 まあ贅沢さえせんかったら、アイトピアもなんとかやっていけるやろ〜」

*「息子さん、まったく期待されてなかったんだ…」
そうですね。しかしそれもまあ、仕方がないでしょう。
次の時代を切り開く人間の行いは、周囲の人間には常に理解されないもの… そうにちがいありませぬ。フッフッフ
*「2006年の時点になって、まだそんなこと言ってるだなんて、もはや凡人といえないレベルだね。
岡本さんは超弩級の人間に違いないよ。ただし超弩級の穀潰しだけどね。(笑)
しかしまあ、よくよく考えてみれば… 費用ゼロでお客さんに恵まれる眼鏡店に変身だなんて、
どうやったってできるわけないことだよ。どうしてそんなカンタンなことに、すぐに気づかなかったんだろ」

いえいえ、そうとばかりは言い切れませんよ。
次の私の、第三の計画を実行したあらましを見ていただきたいのです。

●アイデアその3:梅田地下街案内マップ計画
まず手書きで、日本一迷いやすいと噂の梅田の地下街の案内マップを作成します。(手順一)

061211.jpg

予算ゼロのワクワクマーケティング。(画像をクリック)

*「まあそれは、面白いかもね。でそれを道行く人に配るの?」
いいえ、地図を配るのは私ではありません。梅田の地下街のお店にご協力をいただき、
困った人に情報としてお知らせするのです。
*「ご協力って、いったいどうやって?」

その地図を持って、梅田の地下街の約60のお店に、私が提案書をもって一軒一軒回りました。
「梅田地下街の迷子を無くすために作ったこの地図にあなたのお店のお名前を入れさせて下さい」
という内容のプリントを、私が文面を考えてお配りしたのです。(手順二)

*「なんでまた、そんな面倒な手続きを… 普通、ちょっと書いただけの地図だったら、
無断でお店の名前を書いたって文句なんて言われないでしょ?」
そうです。しかしあえて、店名使用の許可をいただくために各お店を回ることで、
地図に公益性を付加しようということが、私の考えでした。
「地下街地図の裏面には、外国人のかたに英語で道を聞かれたときに
お答えするためのマニュアルも書いてあります。よろしかったらお使い下さい」
というオマケもつけていました。

*「で結果的に、何件からお返事があったの?」
これが予想外に、各お店から反応をいただきまして、
当時で9件からお返事のFAXを頂戴することができました。
みなさまには感謝いたしております。

    ************

そのときから、月日は流れ〜 残念ながら閉じられたお店もございましたが、
ご協力いただいたみなさまのご厚意は生涯忘れません。ありがとうございました。


    ************


*「60件中9件か… でも普通、どこの馬の骨ともわからない人間が提案書持ってきたって、
不審に思って返答なんて返せない、ってことはないのかな?」
そこは私が、書店であらゆる文章術の本を読み漁り、気に入った本は購入して30回以上読んで
骨までしゃぶり尽くして
培った文章のパワーが生きたのかもしれません。
“自分の気持ちを素直に文章に表し、人と人の心をつなげるエモーショナルな文章の書き方とは?”というやつですね。

*「あれ、岡本さんって、ビジネスの情報収集は本屋さんでの立ち読みだけじゃなかったの?」
気に入った本には、敬意を表して買い入れて、徹底的に読み尽くして中身を吸収するのが私の流儀ですので。
しかし私の文章は、父親にはどうもウケが悪いようでして、メガネの技術が絡んだモノを書くと、
決まって父親の手直しを受けてまったく別のモノになってしまうという通例があります。残念至極。

*「どんな文章を書いたのか知らないけど、9件の反応をもらったということは、
それだけ梅田の地下街の迷いやすさに辟易(へきえき)していたお店も多かったってことかもね」
それはそうだと思います。

そして、「こんな地図を作りました!」ということで、梅田地下街地図のことを新聞社にFAXでお知らせしました。(手順三)

*「し、新聞社!? なんでまたそんな大仰なことを… ただの一眼鏡店が新聞になんて、
こちらから頼んで取材なんてしてもらえるわけないじゃない?」
えーと、そのことなのですが、取材はしていただきましたね。
“今、御堂筋パレードの時期に、迷子をなくすために大阪地下街のお店達のご協力を得て、地図を配布しようと考えています。
大阪のタウン欄の充実している産経新聞さんにこの件を取り上げていただけましたら、
要望のあった人の所に地図を郵送するサービスをさせていただきます。”
という感じで。すると産経新聞さんのタウン欄の受け持ちの方が来られまして……

*「で、その切り口で新聞に掲載されたの?」
いいえ、残念ながら… 私の手書きの地図があまりにもヘタクソだったために、惜しくも掲載はされなかったようですね。
しかし書店で読んだ、ある本に書いてあったことが、間違いではなかったことは分かりました。
『小さな会社でも、新聞社の人に取材をしてもらうことは可能です。
‘プレスリリース’と呼ばれる、ある形式のプリントを作成して郵送かFAXで送付すれば、
常にアンテナを張り巡らせているマスコミ各社は必ずチェックしていますので』

*「プレスリリースって、なんだったっけ?」
まあ、プレスリリースといいますと、横文字でややこしそうに聞こえますが、
要は企画書ですね。マスコミの人たちがニュースとして取り上げやすい書き方をすれば、
それだけ取り上げられやすくなると本には書いてありましたので、そこは徹底して研究しましたね。
*「そういえば、ビジネス関係のテレビ番組で聞いたことがあるな。
聞いた話では、ワールドビジネスサテライト“トレたまコーナー”なんかも、
基本はプレスリリースによって成り立ってるとか。
でもプレスリリースって、それを書く専門の業者さんがけっこういるって話だけど」

はい、そうです。ですがプレスリリース作成の専門の業者さんのものでも、
それ以外の一般人のものでも、プレスリリースという点では同じですので、
“マスコミの人たちが取り上げたくなるような、素直な意思を伝えて感情を動かすエモーショナルな書き方”
ができれば、個人でも有効なプレスリリースを書くことは可能なのですよ。

*「そして聞いたことがある…
『一度マスコミに取材を受けた会社は、マスコミ各社の共通のデータベースに登録され、
なにかあったときに再び、どこかのマスコミ関係者から取材を受けることができる可能性が生まれる』とかなんとか」
ですね。たしかにそう、プレスリリースの本には書いてありました。

*「だけど結局、そのときは地下街の地図は新聞には掲載されなかったんだよね。
で、結局問題は、『アイトピアさんが地下街のお店と協力して作ったっていう地図を見て、アイトピアさんに来ました』
というお客さんが現れたのかどうかなんだけど…」
おお! 非常によい質問ですね。
それがまったく効果がなかったのですよ。
私が胃腸の調子を崩しながらも、命を懸けて遂行した計画の結果、お客様アップ効果はゼロだったのです!〔満面の笑顔〕

*「だったらなんのために死にものぐるいでやったんだよ。ただ働きもいいところだったんじゃ…」
それがなぜか私には、それまでの計画失敗時の時のような虚脱感は生まれなかったのでした。
やはり生まれて初めて、一から十まで自分だけで考え、実行した計画だったからなのではないかと感じます。

*「そのときばかりは店長の、父親の手が文章には入らなかったんだ…」
そりゃあ当然、メガネの技術のこととは関係のない件でしたからね。
しかしいい経験になりましたよ。思えばそのときから、
アイトピアの歯車はよい方向に回転しだしたような気もします。

そのときちょうど、ある場所で某異業種交友会が開かれることになり、
そういったイベントに参加したことのない私が一度、そこに参加してみることにしたのですけれど……
その交友会で40分間の講演をしてくださったのが、
元アート引越センターにおられた藤本健二氏だったのです。
*「その藤本さんって人、いまは『藤本経営研究所』っていう経営指導のコンサルティングの会社をされてて、
いろいろな大きい会社とも交流があるとか」

はい、その藤本氏の講演の内容でしたが、“人情を重んじた経営の大切さ”についてのものだったように記憶しています。
そして私は藤本氏に、交友会が終わった後に手書きのお手紙をお出ししたのです。
『私は梅田で、アイトピアという眼鏡店を営んでおります。
私はこれまでになかったアイデアを考えて次から次へと実行しているのですが、
いまちょうどこんなことを考えて実行してみました。いかがなものでしょう』

*「いかがなものでしょう、って… なんとも答えようがないと思うんだけど。
強いて言えば、いかがわしいようなものでしょう……
おかしな若造が、お客様アップゼロの計画を実行して得意がっております」
で、そのお手紙をお出ししたら、藤本氏からお返事が来ましてね……

続く

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