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福井の工場に修行に.1 総括編
さて、前・後編と続いてきた、「福井の工場に修行に」の興業秘話でしたが、
ここでまた「総括編」ということで、一章をさかせていただきたいと思うのです。
*「まだ書くことがあったのか…
というか、書きたきゃかってに書けばいいじゃないの。
ここは岡本さんの個人サイトなんだからさ」

それはそうなのですが、
今回の分だけは特に、
一応ひとことお断りしておかなければと思い…。
なにせあまりにも危険な内容ですのでね。

では時系列を追う形で、
手作りメタルフレーム教室、決死の合宿三日間の行状をまとめてみましょう。

手作りメタルフレームの役(えき)が行われた主戦場
……一日目……

早朝より、新幹線で福井駅へと旅だった私は、
つい寝過ごして金沢にまで到達
あれ? 金沢って、福井よりも南だっけ? 北だっけ? どうだったっけかな〜
*「ええ!? 初日に金沢まで行っちゃったの? しかも金沢で行き過ぎなのかどうなのか、
同乗の他のお客さんに聞かなきゃわからなかったって?
岡本さんのアタマの中では、日本地図はどういう形になってんの?」

フッ、そのような小さなことに動じているようでは、
将来にメガネ業界に大きな影響を与えるほどの人物になることなど夢のまた夢。
*「てゆーか、黙ってりゃ誰にも分からないのに、
なんでこの場を借りて公表しちゃうわけ?」

そして急いで、金沢駅で下車して福井へとUターン。
しかし列車が金沢を出たあたりで、切符点検に廻ってきた駅員さんが一言。
「寝すごしで金沢から福井までUターンですか〜、それじゃ、
‘金沢駅でいったん駅から降りて乗り直した’
という扱いになりまして、大阪〜福井プラス金沢の乗り越し運賃が
約千五百円追加で、さらに金沢〜福井の列車運賃が加算されますので、
いまここで追加運賃、合計約3000円を払っていただくことになりますね〜」

私はそのとき、何が起こったのかよくわかりませんでした。
私は金沢で駅を‘出た’のではなく、駅の中で列車を乗り換えたに過ぎなかったのです。
目的地はあくまで福井の鯖江のみ。運賃は大阪〜福井(鯖江)のみの支払いで事足りると思っておりました。
それが気がついたら、まんまと運賃の追加料金約3000円を支払わされる羽目に陥ってしまうとは。

福井→金沢の乗り越し料金の数百円を支払わされたとか、
乗り越し手続きで面倒な書類を書かされたとか、そのようなチャチなものは決してない、
もっと恐ろしいものの片鱗を味わったのです…

いざ工場の内部へ

メタルフレームを磨く、大がかりな器械兵器を発見
ああ、いったいなんということでしょうか。
あそこでもし、駅員さんが切符点検にやってきていなかったとすれば…
しかし歴史にイフを問うことは、後世の歴史家にしか許されない営み。
今を生きる我々は、ただ黙して結果を受け入れるよりほかありません……
*「ていうか岡本さん、さっき‘小さいことにはこだわらない’って言ってたくせに、
思いっきり細かいことにこだわってるじゃん」

フッ、このくらい細かいことにも頭がまわらなければ、
将来にメガネ業界だけでなくビジネス界をも震撼させるほどの人物になることなど以下略

そしてたどり着いたメガネの聖地・福井の鯖江。
なんとか鯖江駅に着いた私は、
タクシーに乗って知人の工場へとまず行きました。
その途中、タクシーの中からコンビニエンスストアや、
ダイソーやお洒落な自転車屋さんが見えましたね。

そして知人の工場のすぐ近くにあった某工場にて、
アイトピアオリジナルメタルフレームを作る相談を小一時間。
このオリジナルメタルフレームにつきましては、
くわしくはまたいずれにということで、
おいおいこの「メガネ界への挑戦」のコーナー内にて語らせていただきたいと思います。

そして昼食に蕎麦屋(そばや)さんに案内していただいたあと、
知人の工場へと再び移動。
私は一日目から、工場内のセル生地を夜まで調べ尽くし、数百に及ぶ膨大な生地を分類してメモ帳に書き記していたのです。
*「分類って、どういう分類?」

この生地は男性向けの大型サイズで作りたいな〜 とか、
こちらの生地は子供用メガネでとりあえず作ってみようかな〜 とか、
この生地はクセがあるから、セルフレームの腕だけで使って、フロントにはもう少し無難なこっちの色の生地を持ってこようかな〜
とかですね。

*「数百も生地があって、全部について組み合わせを考えていたの?」
もちろんです。
これも、究極のセルフレームカラーのラインナップを揃えるための努力だといえるでしょう。
*「そんなにセルフレームばかり揃えちゃったら、店じゅうセルフレームだらけになっちゃうよ」
別にいいじゃありませんか。
セルフレームと心中するのもまた一興。〔ほんわか〕
ただし、わずかにチェックし忘れていたセル生地もあったのですがね、この時点では。

知人の工場の外観。

色とりどりのセル生地たち。

……二日目……

それで、ひとおおり見るべきものを見たあと、その知人のかたに紹介していただいた旅館に泊まり、
次の日のメタルフレーム教室へ向けての英気を養ったというわけですね。
*「他の人は早朝から福井に向けて列車でやってきてたってのに、
岡本さんは旅館で一泊してゆっくり参戦か。ひとりお気楽なぶらり旅だよね」
し、しかたがないでしょう。もし私までが早朝から出発しての参加であったなら、
金沢まで間違えて行ってしまい確実に遅刻していましたからね。
*「みんなに迷惑がかからなくて良かったね…」

ここでいよいよ、メタルフレーム教室スタート!
かつてない窮状に、現場は怨嗟(えんさ)と慟哭(どうこく)の嵐に包まれていきます。
*「ああ、それは前回の更新分にも書いてあったから、もう次に進んじゃってよ」

メタルフレーム教室終了、気づけばあたりはすっかり夜に。
*「進行早っ! メタルフレーム教室がメインテーマじゃなかったの?」

そして焼鳥屋さんでの飲み会の後、ハプニングでもう一晩泊まることになったのでしたね。[笑顔]
……三日目……

この日、福井に一人残った私は、
知人の工場へと再び行脚に旅立つという、
みちのく薩摩ぶらり旅に出たのでした。
*「いや福井だから。」

一度タクシーの中から道を見ており、
順路も分かっていたとはいえ、
やはりしばらく歩き出してみると、
遙か遠い約束の地への道のりに、いまさらながらに愕然とさせられます。
*「だからそれだったら、最初からタクシーで行きゃ良かったんでしょ!」

先の見えぬ道を、ただひたすら歩く。
ただ己の、限界を超えるためだけに…
ここまで来れば、もうタクシーには乗れない…
そこからはもう、自分自身との戦い。
是非に及ばず、
いうなればこのたびの戦(いくさ)、
日本(にっぽん)の未来をつかみ取るための戦(いくさ)にて候。

*「そうろうって、いつの時代の言葉だよ…
岡本さんがつかみ取ったのは、日本の未来じゃなくて
タクシー代1900円分のもうけだけでしょ」
フフ、この時点ですでに、電車賃で3000円分の黒星がついておりますからね。
まんまと取り返してやりましたよ。
いつかもういちど歩いてタクシー代を浮かせば、
晴れてすべての負けを取り返せることに!
*「その時間があれば、もっと有意義なことに回せるかもしれないのにね…」

タクシーの中から見た、コンビニエンスストアや、
ダイソーやお洒落な自転車屋さんにも立ち寄れましたしね。
ただし、コンビニではボトル紅茶を買ったものの、
他では何も買い物はしませんでしたけど。
*「立ち寄っただけで、買わなかったんだ…」
それと、歩く道順でもうひとつ、印象深い感動のお話がありましたね。

……嗚呼目の前の川に、かるがもの群れ。
どれひとつ、写真を撮ってみやう。
(ニコンのカメラのスイッチを入れる)

これいかに、なにが起こりけるや。
十余匹なるかるがもの群れ、すいと我の視線を除け、はるかかなたへと消え去りしや。
いとあはれなりけるを、あなおかし。
*「よっぽど岡本さんに、写真に撮られたくなかったんだね…」

そうですよね。最近は肖像権の問題がありまして、
なにかとそういうところはチェックが厳しくなっていますしね。
*「いや肖像権とか関係ないから。しかもぜんぜん感動的じゃないから」




撮影失敗!!




目前の川を通り過ぎていく、カルガモの群れ。
すんでのところで逃げられ、
撮影失敗の憂き目を見る。
それにしても、お洒落な自転車屋さんはご親切に、
道に迷いかけた私がお見せした地図を指さして
行く先を教えて下さいましたね。ありがとうございました。
*「タクシーで一度道順を見たのに、それでも迷いかけたのか…
そんな方向感覚でよく歩きだなんてする気になったもんだよ。
しかも自転車屋さんで何か、買っていってあげればよかったのに」

そのことなのですがね、実は後悔しているのですよ。
自転車の二股に分かれた特殊形状のサドル(イスの部品)を買おうかどうか迷ったのですが、
これ以上荷物が重くなりますと力つきて、行き倒れになってしまいますから。
*「いや、なにもそんな重たいモノ買わなくても、他のものをだね…」

残念至極です。
自転車のかっこいいサドルをそこで購入していれば、
そのサドルの写真も撮ったうえで、
このサイトの格好のネタになったものを。
自分の愚かしさが憎い…
『その場で購入した自転車の変則サドルにより荷物はさらに増え、
地獄の片道逃避行はいまや、病膏肓に達したのである』
*「ダメだこりゃ」


そこで私は、この場を借りて宣言しましょう。
次回に福井の、あの自転車屋さんにいったとき、
必ずやサドルを買って、大阪まで持ち帰って見せると。
*「いやだから、わざわざサドルなんて重いもの買って持って帰らなくてもいいっての!
しかもその自転車屋さんに寄るってことは岡本さん、
また歩くつもりなの!!?」

当然でしょう。
一度歩いたコースを二度歩くことなど、
この私にとっては造作もないこと。
次回の福井行きが楽しみですね。フフフ
*「もしかしてこのサイトでウケを取るためだけに、
わざわざそこまでやるつもりなのでは……」(汗)


昔ながらの蔵の外観。中にはいったい何が…

いざ、からくり屋敷の城内へ。
そうして、いろいろありまして、私は知人宅に再びたどりつきました。
「え、ここまで歩いてきたの? なんで?」
と驚かれる知人の前で、私はこう答えました。
「いや〜、大阪に住んでいると、歩く機会がなかなかありませんので。
ちょうどいい準備運動をさせてもらいましたよ」
*「準備運動って、どういうこと?」

「それではこれから工場や蔵の中で、まだ見ていなかったセル生地をすべて見せていただきまして、
ちかぢか作るセルフレームのイメージをじっくりと固めさせていただくとしましょう」
私はそれからさらに数時間かけて、昨日まででわずかに見残していた、工場内のすべてのセル生地を物色しました。
*「すべてのセル生地って、何枚くらい見たの?」

そうですね、総計でざっと3、4000枚は見たでしょうか。
*「この日まだ工場に残っていたっていう、
東京の眼鏡デザイン学校の生徒さんもさぞ、面食らっていただろうね。
しかもそこでそのまま、昼食までごちそうになったんだったよね」

では最後に、私からみなさまに一言のメッセージを送らせていただきます。
“新幹線の乗り過ごしだけは、決してなさらぬように”
*「まだこだわってたのか〜!」

本日の格言
〜新幹線の乗り過ごしだけは、決してなさらぬように〜

蔵の中。大量のセル生地が乾燥のため、
そこに収蔵されていた……

蔵の他にも、工場内に多量のセル生地が埋蔵。
まさにマニアにとっては宝の山といえよう。

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